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第12回 「地域のお役に立つ鉄道として今日も走り続けます。」

地域のお役に立つ鉄道として今日も走り続けます。

会津鉄道(株)
代表取締役社長 大石 直

 1年間、稚拙な文章をお読みいただきありがとうございます。阿部社長のご厚意で書かせていただいた「会津鉄道紹介記事」もお陰様で最終稿を迎えることができました。
 1月28日、TBS系列の「新・情報7days」に雪に強い鉄道として紹介されました。どういう基準で選ばれたのか不明ですが、突然TBSから「雪が降っても止まらない鉄道だそうで紹介したい」と申し入れがあり、「止まるときはあるけど、何とか走らせようとはしている」ということで取材を受け、数分間ですが全国に放映されました。
 今回は、日夜、雪と戦ってくれている社員たちの姿を紹介しようと思います。
 今年の雪は、首都圏の交通機能をマヒさせるにとどまらず、北陸地方や、東北の日本海側に想像を絶する豪雪をもたらし、死者を出すまでの惨事になっています。
 お隣の山形県では、ローカル鉄道が12日間、運転ができなくなりました。これほどの雪害は、長く鉄道に関わってきましたが記憶にありません。
 会津線でも、正月3日、踏切の除雪が間に合わず、レール間の雪がトラックの腹をこすってしまう、俗に言う「亀の子状態」になり、トラックに当たってしまいました。しかしその時の、運転手さんの行動が的確で、最小限の衝撃で済みましたが、危ないところでした。
 また、1月25日には、会津高原尾瀬口駅付近で、昨晩降った雪を車体に抱きかかえてしまい走行不能、人力で車体下の雪(氷)を除去して、ようやく脱出しましたが、特急リバティ会津を田島駅に入れることができませんでした。北陸地方や東北の日本海側を考えれば、この程度のトラブルで済んでいることに感謝しなければならないでしょう。
 会津線は「止まらない」というのは間違いで、止めないための前作業を可能な限りやっていること、それでも止まったら、一刻も早く復旧することに努めているということです。
 この考えは、平成元年、地域の足として、多くの皆さんの支援を受け、第三セクター鉄道として再生した時、収入の源泉はこの一本の路線しか無い、何としても走らそうという「覚悟」から来ていると思っています。
 大きな会社には必ず優先順位がありますが、会津鉄道にはこの「会津線」しかありません。これを止めたら1円の稼ぎもないのです。
 私は10年前に会津に戻ってきたのですが、ここまで頑張る鉄道員がまだ居たのかと、とても嬉しく思ったのを良く覚えています。具体的に説明してみます。
 列車が雪で動けなくなる要因は、主に大量の積雪、ポイントに雪が挟まるポイント不転換、そして倒木などです。
 雪国の車両には、先端に銅製の排雪板がついており、20~30㎝くらいの雪は自力で排除します。しかし、それ以上の降雪には対策が必要となります。大雪の予報が出ると、最終列車通過後から社員による整理除雪が始まります。これは、線路わきにたまっている雪をロータリーで排雪したり、ラッセル車を走らせて貯雪余裕を作ったりしておく作業です。
 57㎞あるので、2組でやっても徹夜作業ですが、こうしておけば記録的大雪でない限り、朝の通学、通勤は大丈夫です。
 次にポイント不転換対策です。列車が交差する駅の両端には、先端が細くなっているレールをモーターで動かして、進路を構成するポイントがあります。移動部分は雪が積もらないように電気ヒーターで温めていますが、その前後10mくらいは降る前に積雪を除いておかないと、降雪や、持ち込み雪(排雪板で押してきた雪や足回りから落ちた雪)が先端レールに挟まり、密着不良が起こり、進路が構成できなくなります。この状態をポイント不転換といいます。
 こんな対策を講じていても、雪が降り続くと、いつポイント不転換が発生するかわかりません。その危険を予知した時は、列車の合間を見て、本社を含めた社員総出のポイント除雪が始まります。(私は老人扱いで、邪魔になるので免除ですが)。今年はすでに2度、朝6時から動員がかかりました。頭の下がる思いです。
 運転中ポイント不転換が発生すると、信号は青くならず前に進めません。保線社員を待っていたのでは何時になるのかわかりません。ここは車掌、運転手の出番です。ワンマンの場合は、運転手一人で雪をかき分け、ポイント先端まで行き、挟まった雪を手で取り除き、信号を制御している指令員と打ち合せをして運転再開です。
 今年に入って3回発生していますが、短時間の運転再開で、お客様へのご迷惑は最小限に抑えられたと思っています。業種にかかわらず、何としても列車を走らせようとする気概を感じ、嬉しい限りです。
 雪が降ると保線作業はできません。この時期、保線チームが最も忙しくなるのが、地味ですが倒木対策、支障木伐採です。会津線の半分以上は山線で、両脇は自然豊かな林です。
 この林、一旦雪が降ると、倒木という危険因子に早変わりします。自社の林なら自由に切れますが、ほとんどは他人の山です。張り出している枝や、倒れそうな樹を早め早めに見つけ、地主の了解を得て、伐採に入ります。これまで大けがをした社員もおり、とても危険な作業です。でも、これをしておかなければ、倒木にぶつかり脱線の危険があります。
 平成18ごろに大きな倒木で、お客様に多大なご迷惑をおかけした事例があり、特に重点を置いている作業です。今週も4日間この作業に従事しています。
 このような対策を講じているのですが、トラブルは少なからず発生しています。決して「止まらない鉄道」ではありません。でも一刻も早く運転再開をするよう努め、1日中停まることだけはないように心がけています。
 数年前の12月25日のクリスマス豪雪。会津若松市で1晩に114㎝積もって、首都圏との交通が完全に途絶えたとき、午後2時、会津線経由で浅草につなぐことができ、多くのお客様に喜んでいただきました。その時の、社員たちの自信に満ちた誇らしげな表情を忘れることができません。
 我々が特に、列車を止めてはならない日が数日あります。大学のセンター試験日、高校の入学試験日、両日とも降雪が心配される時期で、天気予報の確認と、前作業に万全を期して待機するのは当然です。
 昨日(2月12日)テレビ朝日の「報道ステーション」で、湯野上温泉駅が「日本で唯一、囲炉裏のある駅の夜汽車風景」として、ライブで放映されました。雪もかなりきつく、ポイント不転換を起こさないか、倒木で止まらないか、大変心配しましたが、さすが、定時運航で無事放映できました。
 今日も皆さんの足として走り続けます。1年間ご愛読ありがとうございました。

※この文章は会津嶺2018年3月号に掲載されたものです。

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