第12回 「地域のお役に立つ鉄道として今日も走り続けます。」
地域のお役に立つ鉄道として今日も走り続けます。
会津鉄道(株)
代表取締役社長 大石 直
今回は、日夜、雪と戦ってくれている社員たちの姿を紹介しようと思います。
お隣の山形県では、ローカル鉄道が12日間、運転ができなくなりました。これほどの雪害は、長く鉄道に関わってきましたが記憶にありません。
会津線でも、正月3日、踏切の除雪が間に合わず、レール間の雪がトラックの腹をこすってしまう、俗に言う「亀の子状態」になり、トラックに当たってしまいました。しかしその時の、運転手さんの行動が的確で、最小限の衝撃で済みましたが、危ないところでした。
また、1月25日には、会津高原尾瀬口駅付近で、昨晩降った雪を車体に抱きかかえてしまい走行不能、人力で車体下の雪(氷)を除去して、ようやく脱出しましたが、特急リバティ会津を田島駅に入れることができませんでした。北陸地方や東北の日本海側を考えれば、この程度のトラブルで済んでいることに感謝しなければならないでしょう。
この考えは、平成元年、地域の足として、多くの皆さんの支援を受け、第三セクター鉄道として再生した時、収入の源泉はこの一本の路線しか無い、何としても走らそうという「覚悟」から来ていると思っています。
大きな会社には必ず優先順位がありますが、会津鉄道にはこの「会津線」しかありません。これを止めたら1円の稼ぎもないのです。
雪国の車両には、先端に銅製の排雪板がついており、20~30㎝くらいの雪は自力で排除します。しかし、それ以上の降雪には対策が必要となります。大雪の予報が出ると、最終列車通過後から社員による整理除雪が始まります。これは、線路わきにたまっている雪をロータリーで排雪したり、ラッセル車を走らせて貯雪余裕を作ったりしておく作業です。
57㎞あるので、2組でやっても徹夜作業ですが、こうしておけば記録的大雪でない限り、朝の通学、通勤は大丈夫です。
こんな対策を講じていても、雪が降り続くと、いつポイント不転換が発生するかわかりません。その危険を予知した時は、列車の合間を見て、本社を含めた社員総出のポイント除雪が始まります。(私は老人扱いで、邪魔になるので免除ですが)。今年はすでに2度、朝6時から動員がかかりました。頭の下がる思いです。
今年に入って3回発生していますが、短時間の運転再開で、お客様へのご迷惑は最小限に抑えられたと思っています。業種にかかわらず、何としても列車を走らせようとする気概を感じ、嬉しい限りです。
この林、一旦雪が降ると、倒木という危険因子に早変わりします。自社の林なら自由に切れますが、ほとんどは他人の山です。張り出している枝や、倒れそうな樹を早め早めに見つけ、地主の了解を得て、伐採に入ります。これまで大けがをした社員もおり、とても危険な作業です。でも、これをしておかなければ、倒木にぶつかり脱線の危険があります。
平成18ごろに大きな倒木で、お客様に多大なご迷惑をおかけした事例があり、特に重点を置いている作業です。今週も4日間この作業に従事しています。
我々が特に、列車を止めてはならない日が数日あります。大学のセンター試験日、高校の入学試験日、両日とも降雪が心配される時期で、天気予報の確認と、前作業に万全を期して待機するのは当然です。
※この文章は会津嶺2018年3月号に掲載されたものです。