第5回 「大内宿のさらなる魅力発見 ~櫻木姫に思いを馳せて姫蛍を追う~」
大内宿のさらなる魅力発見
~櫻木姫に思いを馳せて姫蛍を追う~
会津鉄道(株)
代表取締役社長 大石 直
7月の半夏祭りの時期になると、大内宿入口の沢沿いに源氏蛍が舞い始める。それを待って、高倉神社の畔に平家蛍が乱舞し、やがて8月の上旬、源・平の両蛍が姿を消すころ、小さな姫蛍が高倉神社の夜を彩り始める。
治承4年(1180)、平家討伐高倉の宮以仁王は、東国に逃げ延びる際、山本村(現、大内)に留まり、のちに只見を経て越後に入った。
一方、妃の紅梅御前と、侍女の櫻木姫たちは、以仁王を追ってようやく大内にたどり着いたが、一足違いで逢うことができなかった。もともと病弱であった櫻木姫は、長旅の疲れと絶望から、8月26日この地において亡くなられた。800年を経ても尚、櫻木姫の思いは姫蛍に姿を変え、大内の里を彩っているかにみえる。
会津鉄道湯野上温泉駅は、大内宿の玄関口であるが、大内宿までの約5kmには、長い間公共交通機関がなかった。そのため、大内宿への交通手段は全て車であり、列車のお客様はとても不便であった。そこで6年前から、当社と広田タクシー(資)さんが組んで、大内宿バス(猿游号)一日フリー券と鉄道をセットにした「大内宿共通割引きっぷ」を発売した。大人1,900円、子供950円である。認知されるまでには時間を要したが、大内宿のイベントポスター等に明記して頂いたこともあり、今では多くの方にご利用いただいている。
特急リバティ会津で会津田島に着いたお客様は、田島駅でこの連続乗車券を購入していただければ、リレー号で湯野上温泉駅まで行き、そこから猿游号で大内宿へ、そして江戸時代に作られた宿場の形態をよく残す町並みを楽しんでいただく。(昭和56年、国の重要伝統的建造物群保存地区選定)
大内宿の夜は、生活の明りが全て街道に漏れない設計となっている。街道には各戸1個の屋号灯だけ。満点の星空であったり、満月であったり、山の稜線が特に美しく、日本一の原風景と思っている。この体験は、大内宿の民宿に泊まるか、湯野上温泉民宿Hのナイトツアーに参加することで堪能できる。
私の推薦する大内宿のおいしいもの、何と言っても「とち餅」。非常に硬い栃の実を柔らかくし、灰で何度もアクを抜く、この大変な行程のため、今ではここでは作られていないようであるが、あの上品な風味はたまらない。ぜひ一度食してほしいものである。
会津鉄道は、おかげさまで開業30周年を迎えることができました。これもひとえにご利用いただいているお客様のおかげであり、心より御礼申し上げます。これからも皆様に愛される鉄道を作ってまいりますので、ご指導、ご支援宜しくお願いいたします。
※この文章は会津嶺2017年8月号に掲載されたものです。